日本人ピルエッター

ここではピルエッターというのを「4回転以上を人前で見せる人」と定義します。ご了承下さい。自分が知る限り、日本のジャグリング界にはピルエッターが4人います。以下、敬称略で紹介。

ここあ(Shingo Yamaguchi) JJF2002 優勝

多段階ピルエットが上手いです。JJF2002の最後の技は3段階4回転ピルエット。シングル・ダブルピルエットはかなり高速、特に回りだしが速いです。噂では2002年の時点で5回転できてたとか。

森田智博 JJF2004 優勝

JJF2004では3回転までだったと思いますが、2006年にJJFのゲストとしてパフォーマンスされた際、3ボールで1upシングル→2upダブル→3upトリプル→1upクアドラプルピルエットを披露してくれました。トスとピルエットがすごく安定してます。

北村慎太郎 JJF2009 優勝

JJF2009でディアボロ1up5回転ピルエットを決めた方。自分は一度しか見たことがないのでなんとも言えないのですが、あれがコンスタントに決まるのなら相当すごいピルエット力です。

浅野雄太 JJF2007 準優勝

自分です。JJF2007に出たときは3ボール1up5回転ピルエットを出しました。(2キック)

面白いことに、自分以外全員日本チャンピオンです。ピルエットをジャグリングの技として使うにはそれなりにトスができる必要があるので、おのずと技術力が高くなるんではないでしょうか。

ピルエットに最適な靴とは

ピルエットに適した履物はゴム靴、革靴または裸足が挙げられます。自分の靴の変遷は、裸足(ジャグリング暦1-2年目)→ゴム靴(ジャグリング暦2-4年目)→革靴(ジャグリング暦4年目以降)となっています。ちなみに自分がJJF2007に出たときはvans(ゴム靴)を使ってました。これは衣装に合い、ピルエットと足技の両方がしやすいものを探してたからです。

裸足

ピルエットの先人達(ここあさんや森田さん)は皆裸足で回っています。それもあって一時期裸足で練習していました。始めのうちはすべりが悪く回りにくいのですが、何度も皮が剥けたりしているうちに滑りがよくなり、回りやすくなります。こうなると靴を履かない方がピルエットはしやすいです。しかし、裸足が衣装と合いづらい、皮が剥けると練習できない等の理由で自分はやめました。

ゴム靴

滑りにくく、踏ん張りやすい、バランスを崩して倒れるという事態を避けやすいです。シングル・ダブル・トリプルピルエット程度なら問題ないですが、床の影響を受けやすく、素材によってはすごく滑りにくく回りにくいです。足の指を上げる等してピルエット中の接地面積を狭くする、靴を使い古して滑りやすくするといった工夫が必要です。

革靴

比較的どんな床でも回りやすく、万能タイプです。ゴム靴と逆で、欠点は床によっては滑りやすすぎること。自分が使っているのはチャコットのジャズシューズ(レザーソール)

ピルエットの有利回りと不利回り

3ボール3アップピルエットを想像して下さい。右利きの人なら普通、右手→左手→右手の順番に3アップすると思います。この順番で3アップしているなら、右回り(時計回り)ピルエット=有利回り、左回り(反時計回り)ピルエット=不利回りとなります。逆にアップの順番が左→右→左なら、右回り=不利回り、左回り=有利回り。

3アップを右手→左手→右手の順番にすると、ボールは左手→右手→左手の順番に落ちてきます。ここで、最初のボールの動きに注目。キャッチされる直前、最初のボールは自分から見て左手側にあるはずです。つまり、右回りにピルエットすれば、360°回りきる前に最初のボールが視界に入ってきます。このため、右利きなら右回りの方が3アップピルエットを成功させやすく、有利だと言われています。

「自分は不利回りだった・・・」とがっくりきてるそこのアナタ!気にすることはありません。有利・不利はボールやクラブ等のトス系の道具でしか関係ありませんし、すごく低い3アップピルエットがやりたい!と思わなければ、わざわざ有利回りに変更する必要はないです。もし仮に変更するなら、ピルエットの方向ではなく、アップの順番を変える方がいいでしょう。両方向ピルエットが回れてもメリットはほとんどありませんが、アップの順番が逆になれば利き腕じゃない方のトスの練習になります。

ちなみに、森田さんは有利回りですが自分とここあさんは不利回りです。

ピルエット中にするスポッティングのメリットとは

ピルエットの動き(足、腕、頭)でスポッティングについて説明しました。今回は「なぜスポッティングをするのか?」について解説します。

スポッティングをするメリット1:「目が回らなくなる」

自分の経験則ですが、上手くスポッティング出来るようになれば目が回りにくくなります。ただし、フィギュアスケートなんかではスポッティングしてないこともあるようで、結局ピルエットを練習しまくれば三半規管が強くなり、目が回らなくなると思われます。自分も、たくさん練習していた時期には目が回らなかったのに、久しぶりに練習をすると目が回ったという経験があります。

スポッティングをするメリット2:「道具を落としにくくなる」

これはかなり重要なメリットです。つまり、
スポッティングが出来てない
=道具をキャッチするとき目の前の光景が横に流れている
=道具が思っているところに落ちてこない
=道具を落としやすい
ということです。

ピルエットを速く回るには

速く回るためには3つ方法があります。

1. 両腕と足をつかって回る

「蹴る力」「右腕を回す力」「左腕を引く力」この3つの力がピルエットの原動力で、これらの動きを強めれば速く回れます。

2. 回り出しを早くする

ピルエットの速度は十分なのに道具をキャッチするのに間に合わない人は、回り出しが遅いことが多いです。回転速度を出そうとすれば、それに備えるための時間も必要になって、回り出しが遅くなります。シングル、ダブルピルエット程度ならピルエットの回転速度はそこそこにして、回り出しを早めた方が成功しやすいです。

3. 回転軸をまっすぐに保つ

ピルエットの速度は、靴底と床の摩擦だけでなく、回転軸が歪んでいることで減速します。いくら両腕と足に力を入れて回っても、いくら回り出しが早くても、軸がまっすぐでなければ結局遅いのです。逆にまっすぐに保てるようになれば、ほとんど力を入れなくても4回くらいは回れるようになります。どうやってまっすぐに保つかというと、とにかく力を抜いてリラックスして練習です。すぐには出来ませんので根気強く頑張って下さい。

自分的には重要度は3>2>1の順。

ピルエット中に意識すること

ピルエットが上手くいかないと、「前のめりにならないように」「後ろに倒れないように」等あれこれ考えてしまいがちです。しかし、ピルエット中は何も意識せず、力を抜いて、体にピルエットの動きを覚えさせるようにするのが良いです。あえて言えば、力を抜いて回れるように「息を吐く」ことを意識するくらいです。

自分の経験から言えることは、ピルエットは練習の質より量がものをいう技術。残念ながらコツはあまりありません。考える前に練習です。これはバランス芸全般にも言えることではないでしょうか。自転車に乗るときでも、あれこれ考えずに乗りまくってたらいつの間にか乗れるようになってますよね。

トリプルピルエットから先のやり方と練習方法

3回転以上のピルエットも基本的にはダブルピルエットと同じ要領で練習・習得できます。

練習方法

やり方はダブルと同じ。トリプルピルエットを回りたいなら以下の練習が効果的です。

  • ゆっくりダブルピルエットを回る練習
  • 素早くダブルピルエットを回る練習
  • 2キック(1回目のキックで2回転、2回目のキックで1回転)でトリプルを回る練習
  • 2キック(1回目のキックで1回転、2回目のキックで2回転)でトリプルを回る練習

クアドラプル(4回転)、クインタプル(5回転)も同じ要領です。

難しさ

ボールの数が増えると難易度が指数関数的に上がる気がしますが、ピルエット自体の難易度の上がり方(2→3、3→4)はあまり変わらない印象です。5回転は安定させられなかったのでそれ以上は分かりません。アップするボールの数が増えると(例えば1アップ→3アップ)、ちょっと指数関数的になってくるような感覚があります。

ちなみに自分の最高記録は、

1アップ4回転ピルエット:100回連続成功
1アップ5回転ピルエット:約30回連続成功
1アップ6回転ピルエット:(確か)2回連続成功

3回転ピルエットの練習を始めてから約1.5年後の成果です。ピルエットのための練習時間はおそらく一日平均2~3時間くらい。参考までに。ピルエットにコツはなく、このブログを読んで急に出来るようになったりすることはないので根気づよく頑張ることが大事です。

ダブルピルエットのやり方

シングルピルエットができるようになってきたら、ダブルピルエットに挑戦してみましょう。ダブルはシングルよりも、回転速度が速く、回転時間が長くなります。以下の3つの練習が効果的。

素早く1回転する練習

「ボールを投げる→素早く回る→余裕を持ってキャッチ」あるいは「ボールを投げる→ちょっと待つ→素早く回る→キャッチ」という練習でダブルのスピードが身についてきます。

ゆっくり1回転する練習

1回転をゆっくり回ることで、ダブルを回ってるときでもバランスが保てるようになります。力を抜いて、なるべく長い時間回れるように練習してみて下さい。

2キックで2回転する練習

これは、1回転したあといったん右足を地面につけて、再び地面を蹴ってもう1回転する、という意味。これで2回転の感覚がだんだんわかってきます。そのうち2キック目が不要になってきて、ダブルピルエットが1キックで回れるようになります。

どれも練習すればいいのですが、ゆっくり1回転するのを重点的に練習することをオススメします。力を入れればわりと簡単に素早く回ることはできますが、ゆっくりバランスをとりながら回るにはけっこう練習が必要で、2回転以上のピルエットでも役に立ちます。しかもゆっくり回るのでボールを高く投げる必要があり、トスの練習にもなって一石二鳥。最初のうちは道具を持たずにピルエットだけ練習するのもありです。

3ボール1アップピルエットと3アップピルエットのやり方

3ボール1アップピルエット

ピルエットの動き(足、腕、頭)で個々の動きを解説しました。これらの動きを組み合わせるとようやくピルエットになります。ただし、いきなりやってもなかなか決まりません。以下のように段階を踏んだ練習方法が効率的です。

まずは1.と2.を練習
1. ボールを持たずにピルエット
2. ボールを1つだけ持ち、高く投げ上げてキャッチ

次に、1.と2.の動きを合わせて練習
3. ボールを1つだけ持ち、高く投げ上げる→ピルエット→落ちてきたボールをキャッチ

3.が出来るようになれば、
4. 3ボールカスケードから1アップ→ピルエット→落ちてきたボールをキャッチ

最後に、
5. 3ボールカスケードから1アップ→ピルエット→落ちてきたボールをキャッチしてカスケードに戻る

3ボール3アップピルエット

3ボール1アップピルエットが出来るようになったら、3ボール3アップピルエットに挑戦してみましょう。1アップと比べると3アップはかなり難しいです。成功させる2つのコツは、

1. ボールを高く投げる
高く投げるほど、ピルエットに時間的余裕が出来て成功しやすいです。

2. ボールを投げる(時間的な)間隔を短くする
ボールを投げる間隔が短いと、それだけピルエットに使える時間(3投目を投げてから1投目をキャッチするまでの時間)が長くなります。

ピルエットの動き(足、腕、頭)

ピルエットの動作は足、腕、頭の動きに分けられます。

足の動き

自分はピルエットが左回り(反時計回り)なので、説明はすべて左回りを仮定します。以下がピルエット中の足の動き。

肩幅に立つ

右足を一歩前に出す

右足で地面を蹴って、左足を中心にして左に回る

蹴った後、右足は左足にくっつけるようにすると速く回れます。「右足で地面を蹴る」という行為はピルエットの3つの原動力のうちの1つで、あとの2つは「右手・左手を縮こめる」です。

左足のどの辺りを中心にするか?

自分は親指と人差し指の付け根の中間を回転中心にしています。でもこれはおそらくどこでも良くて、ここあさんは小指の付け根を回転中心にしてると聞いたことがありますし、ビクトルキーはかかと中心でピルエットしています。(かかとピルエットは若干不思議な感じに見えます)

腕の動き

  • ピルエット中の腕の動きは以下のようになります。
  • 右腕:横に伸びた状態→縮める
  • 左腕:縦に伸びた状態→縮める

腕を縮めるのと同時に地面を蹴ります。足と同じく、ピルエット中は腕を出来るだけ小さく折りたたんだ方が速く回れます。

頭の動き(スポッティング)

ピルエット中の頭の動きは足・体の動きと少し違います。

  • 体が約45°回ったときに頭の回転をスタート
  • 体が約315°回ったときに頭が正面に戻ってくる

頭は体・足と比べて、遅くスタートして速く戻ってくるので、回転速度が速いです。この独特な動きを「スポッティング」と言います。以下の2点に注意して練習することをオススメします。

1. 視点を回る前・後で同じにする

回転後、同じ視点に戻ってこれれば、ボールを見失わずに済みます。これが上手く出来るようになれば、ダブルやトリプルなどを回るのも上手くなってきます。

2. 頭の角度

道具を持たずにまずはピルエットだけ練習、というときは自分の道具に合わせて頭の角度を固定するようにしてください。道具を持たずに練習する場合、特に意識しなければ正面を向いて回ると思います。しかし、例えばボールでピルエットする場合は斜め上を向いて回ります。このため、道具を持たずに練習して、いざボールを投げて回ってみると後ろにバランスをくずすことがあります。自分の場合は、道具を持たずにピルエットの練習をするときでも、斜め上を向いて回るようにしています。